世界観の説明と冒頭部分のおおまかなあらすじ
ムラクモ王国を中心とした世界が舞台で、他のコミュニティへと移動するには深界という平地を通る必要があります。
その深界には狂鬼と呼ばれる虫や獣が住んでおり、力を持たない人間は餌としてただ命を落とすだけの存在でしかありません。
唯一対抗できるとすれば彩石を持つ人間です。
この世界ではどの生物も輝石と呼ばれる器官を所持しており、人間の場合は左手の甲に付いています。
多くの人間は濁石と呼ばれる白く濁った輝石で何の能力もありませんが、稀に特殊な力を発揮できる色のついた輝石を所有している者もいます。
それが、彩石です。
主人公はシュオウという濁石持ちかつ隻眼の幼子で、元々は孤児で一日を生きるのもギリギリという酷い生活を送っていました。
そんなある日、自らの寝床に負傷して逃げ込んできたアマネと出会うことで、その運命を大きく変えていきます。
アマネはシュオウの並外れた動体視力に注目し、その気があるなら弟子としてすべてを叩きこむことを提案してきます。
現状の打破を望んだシュオウはその提案を飲み、アマネから戦い方や深界での生き方など色々なものを命がけで学びました(シュオウという名もアマネが命名)。
そこから数年経ち青年となったシュオウはアマネの元を去り、深界から再び人の世に出てきます。
まずは生活するための金を稼ぐ必要があるという事で紹介された「深界踏破訓練」に参加することで、物語は大きく動き出すのでした。
俺TUEEEEだけではない色々な魅力が詰まった内容だった
主人公のタイプは俺TUEEEE系
あらすじからわかるかもしれませんが、主人公のシュオウは並外れた動体視力とアマネから叩き込まれた戦闘術によって相当な強さを持つに至っています。
この世界では濁石持ちが彩石持ちを圧倒することは不可能とされていますが、シュオウはその常識をものともせず簡単に勝利してしまうのです。
また、ほぼ不可能とされている深界で生活したり狂鬼を倒したりすることも、難なくこなしてしまうほどに強いです。
このことからも、シュオウが俺TUEEEE系の主人公だという事が良くわかります。
ただ、細かくいうと動体視力という特殊性はありますが、それを活かすための身体能力の強化については自力という点で多少違いがあるかもしれません。
多くの作品は突然力に目覚めるか、与えられるかして努力せずに強くなりますからね。
一般の俺TUEEEEとは異なり戦闘では緊張感があるシーンが多い
通常、俺TUEEEE系(その世界において異常な強さを持ち誰も倒せない唯一無二の存在)は、その強さ故ハラハラすることが少ないです。
強大な敵が向かってきても難なく倒してしまい、周りの仲間も強いか強くないにしても主人公が簡単に守ってしまいます。
そういった主人公無双は観ていて爽快ではありますが、展開も予想しやすく単調で下手をすれば飽きてしまいます。
その点、本作では確かに主人公は圧倒的な強さを持っています。
しかし、その根幹を支えているのが左目の並外れた動体視力のため、それを封じられてしまうと一転して窮地に立たされるという弱点にもなり得るのです。
実際に「初陣編」ではその弱点を看過され、あわやという場面もありましたしね。
また、いくら主人公が強いとしても万能というわけではありません。
濁石なので異能の力はなく、手が届く範囲かつタイミングが合わなければ周りを守れないことだってあります。
シュオウが人の世に出て活躍するにつれ、周りに集まってくるたくさんの仲間たち。
彼ら彼女らも十分強くはありますが、それはあくまでも通常よりも強いだけであって無敵ではありません。
狂鬼に出くわせば命を落とすでしょうし、格上の相手と当たれば一方的に蹂躙されることもあるでしょう。
そういった仲間たちと一緒に戦う場面も多々あるので、戦いは常に緊張感があってハラハラする場面も多いです。
シュオウの周りにできていく個性豊かな仲間たちも魅力
始めは一人だったシュオウも、問題を解決していくたびに仲間が徐々に増えていきます。
特に、最初の無名編で登場する「クモカリ」と「ジロ」との関係性は、読んでいて心地良いものがありました。
隻眼に頭がツルツルでマッチョなオカマ、蛙人という偏見の目で見られがちな三者が、「深界踏破訓練」という危険な仕事を通じて徐々に心を通わせていく。
こうして生まれた固い絆がその後も続いていく様子に、思わず顔がほころんでしまいました。
初回特典でしょうか、1巻に付いていたスペシャルストーリーの「夕暮れジロ散歩」では、ジロの仲間たちに対する想いが描かれていてそれがまた良かったです。
シュオウの出生や特殊能力に何かしらの秘密がありそう
「外交編」や「開戦編」なので少し経ってからになりますが、シュオウにはどうも普通ではない特殊性があるようです。
それがシュオウが捨てられていた理由に繋がったり、並外れた動体視力を持っている理由だったりすると思うのですが、今のところはまだ匂わせている程度に描かれています。
今にして思えば、カザヒナがシュオウの匂いを嗅いでおかしくなってしまうのもギャグ以外の理由がある気がします。というか多分あります。
おそらくおぽっさむ氏(作者)の中では何かしらの構想があると思うので、今後それがどう明らかになっていくのかというのも楽しみですね。
おわりに
1巻をものの数時間で読み切ってしまい、その面白さから我慢できず「小説家になろう」で掲載されている分を一気読みしてしまうほどに面白いこの作品。
少しでもその魅力が伝わればと思い感想を書いたのですが、冗長になり過ぎてしまったかもしれません。
あまりネタバレし過ぎても面白さが半減すると思い、抽象的になってしまったのもかえって伝えきれなかったかもしれませんね。
それでも、ほんの少しでもこの作品の魅力が伝わったのであれば、試しに読んでみてできれば感想を書くなり本を買うなりして欲しいです。
もちろん私も両方するつもりです。
そうすることで、きっと未完で終わらずに完結させてくれるはずですからね。
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